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飯鮨の話し(2014正月帰省・前編)

正月に仙台へ帰省してきた。

一昨年の夏、老いの目立ってきた両親が弟の新居へ身を寄せて、以来実家は仙台となっている。

友人には長男が多いけれど、なぜか何処も弟達が堅実でしっかりしている。

妻子は仕事に学業にと忙しがっていて、この頃は帰省に同行する機会が少なくなった。寂しい気もするけれど、人生のある一時期が終了したのかなとも思う。

まあ、そのぶん今は貴重となっている両親との時間をしっかり持つことが出来るし、とかく長距離ドライブには夫婦喧嘩がつきものなので、その地雷原を往かずに済むのは気楽ではある。

正月二日の夕方に到着したところ、父の調子があまり良くないらしく、母いわく「ゆんべながら宇宙人だのさ(夕べから宇宙人なのよ)」と。

父は椅子に腰掛けてはいるが、顔を見ると緩く開いた口から舌が出たままになっていて、よだれが垂れている。

肝機能が低下していて、血液中のアンモニア濃度が高くなり過ぎると意識を失うらしい。その一歩手前がこの廃人のような表情なのだ。意味不明なことを言ったりトイレを汚してしまったりの父を、母は宇宙人だと言って何かにと世話を焼いている。これもひとつの夫婦の完成型なのかなと思い、感慨を持って眺めた。

到着した日の晩は仙台在住の友人が焼酎を持って訪ねてくれた。親しい同級生の弟で、彼は自分でハタハタの飯鮨(いずし)をこしらえたりもする。去年はブリコ入りのものをご馳走になったけれど、かなり美味しかった。今年の分はまだ熟成途中らしい。

ハタハタ飯鮨
(去年のハタハタ飯鮨)

飯鮨は現在の握り寿司のご先祖様のような郷土食だ。生の魚を塩で〆てから、御飯、米麹などと一緒に熟(な)れさせたもので、琵琶湖の鮒鮨(ふなずし)が有名だけれど、サバやサンマを使ったものなど、日本各地で個性的な飯鮨が受け継がれている。

現在のものは衛生的な面と誰もが食べやすいようにという配慮からか酢で処理してあるものが一般的だけれど、酢を使わず古典的に乳酸発酵させたものは形容し難い芳香と旨味がある。けれども食べつけない人には単に「腐った魚」と感じられるかもしれない。

ボツリヌス菌による食中毒の多くがこの飯鮨で起こっている。時に死者も出る怖い食中毒である。ボツリヌスは嫌気性菌で空気に触れない密閉環境を好むので、熟成はそれとは逆の好気的な環境で、好ましい菌や酵母に活躍してもらいながら進む必要がある。

郷里の青森は飯鮨王国と言っても良いぐらいその種類が豊富で、ハタハタの他に、鮭、ホッケ、イワシ、アジ、カレイなど、あらゆる魚で造られている。珍品としてはウグイやニゴイなどの淡水魚も材料になっていたりする。箱売りしてあるような小魚を何であれ飯鮨に加工して日持ちを良くし、乳酸発酵で軟らかくなった骨ごと食べてしまうのである。ずっと残っていってほしい食文化である。


飯鮨の話が長くなってしまった。初日の晩は母が煮ておいてくれたツブ貝や、弟がこしらえたという牛スジ煮込みなどを頂きながら深々と飲んだ。大きなツブ貝をほじっていて煮汁の中にくるりくるりと貝の腑(わた)が幾つかおよいでいるのに気が付いた。何かとたずねたら、「刺し身とったのごり。オメだば食べるべど思って(刺身を取った残骸。貴方なら食べるだろうと思って)」と母。なるほど・・・何よりのご馳走だ。

(この項は次回へつづきます)

テーマ : 趣味と日記
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

オドサマ

Author:オドサマ
郷里の津軽地方ではナイスミドルをオドサマと呼びます。まだそれほどの年齢でもないのですが、故郷への親愛をこめてハンドルネームとしています。現在は新潟県東頸城在住です。古代、東北は採集民の楽土であったといいます。その血統によるものか、自然の中で食材の採集を楽しみ、調理を楽しみ、食べることを楽しむことで、日々心身が満たされています。そんな喜びをブログを通して多くの方にお伝えできればと思っています。

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