FC2ブログ

サンショウ

 新潟県東頸城郡◯×村に移り住んだ最初の一年間は、

勤め先であった村立病院の

当時はすでに使われなくなっていた入院病棟の一室(3号室)で暮らしていた。

役場に対応を頂いての苦肉の策であったけれど、

それこそ学校の教師意外の単身者が転入してくるなどという事態は想定外のようだった。

でも、家賃が無料だったのは有難かった。

鉄筋コンクリートの3階建てで、オペ室を備えた立派な病院だったけれど、

永く村の医療を担ってこられた老先生の引退によって

外来診療に必要な設備以外は使用されなくなっていた。


夜は一人である。人気のない病院というのはやはり寂しいもので、

浴室やトイレに行く際に嫌でも目に入る、暗闇に延びていく廊下の光景。

ザワザワと背筋が寒くなる思いをしたものである。

患者さんと話していて、

「やっぱりこの病院で亡くなられた方なんかも居られるんでしょうねぇ・・・」

などとそれとなく訊いてみると、アッハッハと笑いながら、

「病院だもんが、いっぺいるごってやー」と、

期待と真反対のお答えを頂いたりもした。


食堂で一人、テレビを観ながら遅い夕食を食べているときに、

「すみません」と女性の声が聞こえた気がして、

気のせいかなと振り向いたら扉から若い女性の顔半分が覗いていたことがあった。

ドキリとして全身に鳥肌が立ち、のけぞってひっくり返りそうになったけれど、

何のことはない、近所に帰省していた娘さんが電話を借りに来ただけであった。

「家の電話が故障しちゃって・・・」とのことだった。

かなりの仰天ぶりだったハズなので、きっと家に帰って皆に話して聞かせたにちがいない。

後日そちらのお母さんが、「先日は娘がどうも・・・」と言ってクスリと笑った。

どんな顔で驚いていたか、今度機会があったら聞いてみよう。


 前置きが長くなってしまったけれど、

晴れて病院住まいを終えて村営住宅で暮らし始めた頃に、

山で見つけた小さな山椒の若木を掘り取ってきて、プランターに生けてみた。

料理の彩りに重宝したけれど、

なにぶん木とも言えないような小さなのをいつもいじめていたので、

その山椒はいつまでも大きくなれずにいた。

そのうえ冬の雪にもいじめられて、枝は折れ樹皮がめくれといった具合に、

可哀想なことになっていたのである。


 数年後、人里離れた場所に小さな土地と建物を購入した。

猫の額ほどの土地ではあるけれども、生まれて初めて自分が自由にしていい土地を得た。

そこで、件の山椒を地面に下ろしてあげたのである。

「長い間すまなかったね」と、詫びる気分だった。


 それから山椒は雪にいじめられはしながらも、土が合うのかみるみる成長した。

けれども、この山椒には実が付かない???

調べてみたところ、山椒は雌雄異株であることが分かった。

「おまいさんは、どちらだね・・・」

見ても分からないので、とりあえずは山で別の苗木を掘ってきて隣に植えてみた。

「おまいさんにも、パートナーが出来たねぇー」

とはいえ、♂♂かもしれず、♀♀かもしれないのであった。


そして昨年、後で植えた山椒が、まだ小さなままの木にいじらしく実を付けていた。

見ると、付き合いの長いほうの山椒がその上を覆うように大きく枝を広げていたので、

スマンスマンと言いながら思いきった剪定をほどこした。

「おまいさんはそういう星の下に生まれついたんだね・・・。」

そのせいか今年は雌木が思った以上に成長し沢山の実を付けた。

雄木と出会ってから、いつの間にか十数年。

眼を見張るようなその雌木の勢いが妻の姿と重なり、

しばし感慨深く眺めていたオドサマであった。

山椒の実自生

 せっかくなので、何かに利用してみたい。

掌に一杯の実を摘み取った。

山椒収穫

何にしようかと考えて、とりあえずは日持ちの効く佃煮にしてみることにした。

後で何かに転用してもいいし。

砂糖と酒と醤油を煮絡めていると、果皮がめくれて黒い種子が出てきた。

七味に入っているやつだ。思った以上に実が成熟していたようである。

汁気が少なくなるまで煮詰めて出来上がり。

山椒佃煮

種のカリカリ感が心地よい。黒くはなっていても、やはり微妙に未成熟なのだろう。

後で来るビリビリ感も本格的で、舌や唇に痛いようである。


 某日、晩酌も終盤の虚ろな瞳に、妻子が食べ残した塩鱒の皮が目に付いた。

焼き魚などは、妻子の食べ残しで結構つまめるのである。

はたと閃いて鱒皮を飯にのせ、酔った勢いで山椒の佃煮も大量にのせて湯かけ飯にした。

以前から鮭鱒には山椒が合うような気がしていたのだ。

塩鱒の湯かけ山椒載せ


しかし食べてみると、合うとか合わないどころの問題ではなく、

もうビリビリのヒリヒリで味など分からず、

もがきながら完食。少し懲りて眠床についたオドサマなのでした。


テーマ : 料理
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

オドサマ

Author:オドサマ
郷里の津軽地方ではナイスミドルをオドサマと呼びます。まだそれほどの年齢でもないのですが、故郷への親愛をこめてハンドルネームとしています。現在は新潟県東頸城在住です。古代、東北は採集民の楽土であったといいます。その血統によるものか、自然の中で食材の採集を楽しみ、調理を楽しみ、食べることを楽しむことで、日々心身が満たされています。そんな喜びをブログを通して多くの方にお伝えできればと思っています。

カテゴリ
最新記事
最新コメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク
ブロとも一覧
最新トラックバック
オドサマの本棚
Share Vision
サイトアフィリエイト無料テキスト進呈中!
月別アーカイブ
ランキング応援お願いします!
↓↓↓

FC2Blog Ranking

日本ブログ村ランキングも参加中!
RSSリンクの表示
QRコード
QR