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薬味が主役なのだ


仕事で訪問するお宅はその一角だけが軽井沢の別荘地の佇まいで、雑木の林床にカタクリが開花の陽気を待っている。

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この冬は雪が少なく比較的に暖かだったので、春が早いかと思いきや、三月の後半になって寒い日が続き、四月に入ってからも真冬のような降雪があったりして、せっかく替えたタイヤをスタッドレスに戻した人も多かったのではないだろうか。寒いので猫も丸くなって寝ている。

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夏に田んぼの土手の草刈りをしているとニラの匂いのする場所があって、そろそろかなと思って覗いてみた。

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まだ幼ないけれど野良のものはすぐに硬くなるし、放かせば雑草、料れば食料。刈り払ってしまう前になるべく有意義に楽しんでおきたい。調理バサミで根元をチョキチョキと、軽く一掴みを採集。

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野良アサツキの姿も見える。

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ニラなどは食料品店で年中入手できるし珍しくもないけれども、野良のものを摘んで食べるのは体に春を取り込むような喜ばしさがある。ニラを楽しむためにカツオの刺身を買ってきて、コチュジャンと醤油と胡麻油で漬けにした。薬味が主役なのだ。

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ノビル



新潟へ来てずいぶん知らない山菜を覚えた・・・キノコも。

東京で暮らしていた頃、強烈に海山川で遊びたい衝動があって、というか自然のものを自ら採集して食べるということに飢えていて、釣りや山菜の本を眺めては悶々としていた。

ある時期、埼玉の上尾にいた弟の所に居候をしていて、天気の良い土曜日には板橋区内の職場まで自転車で出勤したりしていた。

半日の勤務を終えて帰りはのんびりと、道路には詳しくないので迷子にならないようにまずは埼京線に沿って大宮まで、そこからは東北線に沿って自転車を走らせた。

線路沿いにはけっこう緑があって、ひょっとすると美味しい野草があるのではと道々物色していて(≒不審者)、見つけると嬉しかったのがノビル(野蒜)だった。

丸い球根がちぎれないように慎重に抜いて持ち帰り、犬や酔っぱらいが液肥を与えてくれていたかもしれないので一応は洗って薄皮を剥き、生のままに味噌をつけて食べた。長距離を自転車で走った後なので、ビールも美味しかった・・・。


今朝は6:00集合で自然観察会があった。基本的には野鳥を観るために早朝に集まっているので、フィールドスコープを肩に担いだりしているのだけれど、それよりも道端の草木の中に美味しいものがないだろうかとか、沢があればサワガニがいるかもしれないなとか、そういう方面にばかり触手がうごく。

不思議なものでそうしていると、美味しい野草は周囲の緑とは異質な容姿をして視界に映り込んでくる。チョウチョが自分の食草を見分けるような能力が、少しは人間にも備わっているのかもしれない。私の場合はネギの仲間がよく見えるようだ。

ノビル

埼玉の線路端でよく採集したノビルだけれど、この辺りで天然のものを見かけることは少ない。山アサツキはよくあるのだけれど、ノビルは珍しい。周囲にも他の株は見当たらなかったので、3本だけを間引かせてもらった。それにしても玉が大きい。

ノビル味噌

ノビルに味噌をつけて齧りながらビールを飲んだら、東京近辺で暮らしながら野山に飢えていた頃の気分や風景を思い出した。匂いは記憶を呼び起こす。新潟へ来て見知らぬ山菜やキノコをよく覚えたのも、きっとあの頃の反動だったんだろうなぁと思った。


秋の塩漬けに春を和える


細かな雨が降りつづいて、少し緩んで湿った空気が、残雪の上を静かに流れる。

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こんな日はあの赤らんだ杉の木も花粉を飛ばしてはいないだろうから、マスクを外して青味がかった空気を味わう。

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わずかに冬の匂いがするのは、雪の中に閉じ込められていたオゾンの匂いかもしれない。


今日は少しだけフキノトウを摘んで帰る。ちょっと試してみたい料理を思いついたのだ。

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昨年の秋口に採集して塩漬けにしておいたアミタケを、塩出しして醤油味で甘辛く煮ておいた。それに普段ならトロロ昆布と赤唐辛子でも入れて食べるのだけれど、郷里の青森では食用菊を加えたりもするので、もしかすると同じキク科の植物であるフキノトウを合わせたら面白いかもしれないと思ったのである。

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案の定、この組み合わせは絶妙で、おそらく今後は定番料理に位置づけて、これから毎年春には他人様に無理やり食べさせドヤ顔をして見せられるような、そんな一品になった。

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フキノトウは茹でて水に晒して刻んだだけだったけれど、たぶん少し下味を付けておいた方が、より美味しかったかもしれない。まだキノコの保存があるので、また試してみようと思った。

テーマ : 料理
ジャンル : 趣味・実用

オオバギボウシ(ウルイ)




この春から一人暮らしを始めた娘を迎えに長岡へ。

旧大島村からから峠道を越えて柏崎へ抜け、そこから高速道路に乗る山越えルート。

残雪の山の斜面を縫うように走る細道には誘惑が多く、寄り道ばかりしていてなかなか前へ進まない。

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アカメガシワ

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オオバキスミレとタチツボスミレ

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トキワイカリソウ

雨上がりの植物たちは瑞々しく、美しい。
尾神岳を左に見ながら北上する。

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道端の斜面にアザミとウルイを見つけて、少量を採取した。

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採集物は翌日の昼の食材になった。青森の人気ラーメン店「味の札幌」の伝統的メニュー「味噌カレー牛乳ラーメン」をまねたパスタにしてみる。

中高生だった昭和50年代、青森松竹でジャッキー・チェンの映画を見て、館内の「味の札幌」でラーメンを食べるのが何よりの楽しみだった。当時は学割があって、たしか学生は100円引きだったと思う。

スープもトッピングも、どのような組み合わせでも注文OKだったので、よせばいいのに「うめ納豆牛乳ワカメ」とか妙な注文をする輩もあり、そんな中で生まれて青森市民に愛されてきたのが「味噌カレー牛乳ラーメン」なのである。

材料はこんな感じ。

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山菜の風味が分からなくなってしまうのでカレースパイスはどうしようか迷ったけれど、結局いれてしまった。

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味は素晴らしく美味しかった。上越の人気ラーメン店「オーモリ」の味噌ダレを使ったので、まあ不味くなるわけがない。

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あまりに美味いので残ったスープにご飯も投入して完食した。

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案の定、個性の薄いオオバギボウシなどは強力な風味にかき消されてまったく存在感が無かった。

オオバギボウシは普段なら軽く茹でて塩昆布和えで楽しむことが多い。醤油と胡麻油をちょっと垂らして白胡麻をまぶす。風味に癖はなく、わずかに甘みと苦味がある。若干ヌメリがあって、肉厚な柄の部分の歯ざわりが心地良い。柄だけを茹で干ししたものは「山がんぴょう」などと称されて保存食となる。


・・・匂いというのは記憶と密接に結びついていて、過去の場面を、その時の感情までを含めて強烈に思い出させる。

オドサマの場合「味噌カレー牛乳ラーメン」の風味は、ジャッキー・チェンの映画に感化されて逆さになって腹筋運動を試みたり指立て伏せをしたりしていた、アホでけなげな青春の一場面が思い出される。



テーマ : 料理
ジャンル : 趣味・実用

2016春 仙台帰省(タネツケバナ・馬ハツ ほか)


現在は仙台で暮らしている両親のもとへ実家帰り。

寝たきり状態になっている父を
腰掛けさせたり、立たせてみたりしてみようかと
思っていたのだけれど
数日前にまた救急車のお世話になって
入院してしまったらしい。
今回は軽い脳梗塞だったようだ。

土曜の午前の仕事を終えて、
大島青空市場で山アサツキと舞茸
耕太郎農園の麩饅頭、雪割草一鉢を購入。
それと自家製玄米30kgを土産に上越を立ち
到着は夕方遅くになった。
今回はカーナビの設定を「距離優先」にしたら
山形で訳の分からない細い路地を走らされたりして参った。
そのおかげというか、山形の赤湯で気になる看板を見つけた。

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馬肉も置いてあるお肉屋さんなのかなと
興味をそそられ入店してみると
店内は意外なほどに物が少なく簡潔で
小さめなショーケースには
赤い馬肉だけが並べられていて
その横には台秤とレジスター。
奥には作業台があって
大きな肉塊と包丁が数丁。
どうやら馬肉専門店のようだった。

脂の少ない赤身肉ばかりが並んでいるのを
好ましく眺めていると
「馬ハツ」と書かれた商品が目についた。
赤い塊が真空パックになっていた。

オド:「これは焼いたりして食べるんですか?」
店主:「焼いてもいいし、生でもいけるよ」
オド:「生でですか・・・」

200g程だろうか、600円そこそこの値段は
良い買い物だと思った。
晩酌が楽しみになってニヤつきながら先を急いだ。

両親が世話になっている弟の家に着くと、
すでに晩酌の準備が整っていた。

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北海道のどこかの街に税金を納めたら
送られてきたという身の詰まった毛ガニや
高級地鶏「磐井鶏」のモツ煮、カツオの刺身
フキの炒め煮などが並んだ。
カツオの刺身に持参した山アサツキを添えてみた。
これだけのご馳走があれば出すまでもないかと
馬ハツは冷凍庫に収めた。

飲みながら弟に馬肉屋さんの話しをしたら
「そうそう、こっちの馬肉屋さんはガランとしているんだ」
とのことであった。意外にスタンダードらしい。


2日目の午前中は山菜取り。
今回の帰省の主な目的は父の見舞いと
母を山菜取りに連れだすことなのだった。
仙台市の北隣になる黒川郡にある
七ツ森湖の周辺を散策してみた。

民家の庭には梅の花が綺麗に咲いていた。
けれども野山はまだ冬枯れの様相で
「フキノトウが採れればいいかな?」
などと言いながら、母と弟と三人
それぞれ刃物(100均ナイフ)を手に
湖畔をうろつきはじめた。

本当にフキノトウだけだなぁと思っていたら
小さなロゼット状の青葉が目に付いた。
タネツケバナだ。

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アブラナ科の植物で
クレソンを小柄にしたような丸みのある葉が
いかにも温和で食草らしい。

山菜取りは不思議なもので一つが目に付くと
同じ物が次々と見えるようになる。
その物の特徴がインストールされて
雑多な視覚情報の中から
無意識に選別が行われる。
普段は気付かずにいるけれど
人には意外な能力がある。

膝の関節症で歩行が困難になってきている母も
こと採集となるとよく動く。
「いなくなった」と弟が言うので探してみると
カーブを曲がった直線道路のずっと向こうから
膨らんだ袋をぶら下げて歩いてくるのが見えた。

フキノトウとタネツケバナのほかには
芽吹きのヨモギも摘むことが出来た。

午後からは父の入院する病院へ。
父は胴をベッドにくくられ
両手には指なし手袋をはめられて寝ていた。

「これ何だべ(何かな)?」

と、父に繋がる黒いヒモを引こうとすると

「あ、それ引げばまね(ダメ)!」

と母。ヒモの一端は警報ブザーに繋がっていて
父が大きく動くと看護師が跳んで来るのだそうだ。

父はもう僕と弟の区別がつかなくなっている。
けれども似たような顔が二つ並んであることの意味がわかっているのかいないのか
薄っすらと笑顔をみせた。

「あらま、笑って・・・めずらしい」

母が驚いていた。


二日目の夕餉の主役はやはり採集してきた山菜だ。

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フキノトウとヨモギは天ぷらに
タネツケバナはロゼット状のものを
食べやすい大きさに割いてサラダにした。
その他にはスズキの刺し身、三陸の生ガキなど。

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山菜の天ぷらは粉をゆるめに溶いて
薄衣でサックリ揚げる。
どちらもクセの強い山菜なので
天ぷらにしても風味が残り、食べて楽しい。

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タネツケバナは若干硬いけれど
風味はまさにクレソンのそれに近く
さわやかな辛味もあって
初めてだという母も弟も喜んで食べていた。

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三日目は午後の早い時間に父を見舞い、帰路についた。
東京にいる姉が
父が八十歳になる節目に両親のお祝いをしようと言うので
五月の連休にも、また訪ねる予定だ。


馬ハツは冷凍したものをそのまま持ち帰り
上越へ戻った晩に半分程を刺し身にして食べた。

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レバ刺しのような感じを期待していたのだけれど
心臓はやはり筋肉なので
味はあっさりとして癖もなく
けれどもしっかりと赤身肉の滋味があり
美味しく頂いた。

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それと仙台行きの前に仕込んでおいた
フキノトウのゼラチン固めも
どんなものかと味醂味噌で食べてみたけれど
まあ面白みはあるかなぁぐらいなもので
いま少し工夫が必要だと思った。

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今度は寒天で試してみようかな(^^)/


テーマ : 写真日記
ジャンル : 日記

プロフィール

オドサマ

Author:オドサマ
郷里の津軽地方ではナイスミドルをオドサマと呼びます。まだそれほどの年齢でもないのですが、故郷への親愛をこめてハンドルネームとしています。現在は新潟県東頸城在住です。古代、東北は採集民の楽土であったといいます。その血統によるものか、自然の中で食材の採集を楽しみ、調理を楽しみ、食べることを楽しむことで、日々心身が満たされています。そんな喜びをブログを通して多くの方にお伝えできればと思っています。

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